異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「キスの一つくらいしておこうかなって……。いまという時はいましかないのよ。先々何が起こるのか分からないのだから、メグミも自分の気持ちに少しは寄り添ってみたら? 頑固に断るばかりじゃなくて」
「――キス……っ。私からしろって? ……すごい難題ですよ」
頬を上気させてぶんぶんと首を横に振ったが、心の中にはまったく別なことが浮かんでいた。
――何が起こるか分からない……。
ある日突然、異世界にトリップした。もしかしたら、突然、また違うどこかへ飛ばされてしまうかもしれない。
「そうですね……。いまという時はいましかない」
いきなり目の前がすっと開けたように思えた。だからといって、どうなるものでもなかったが。
ローズベルが彼女にしては珍しく気落ちした声で呟く。
「ずっと恋人でもいいかな……」
彼女は公爵の一人娘だから、結婚しない訳にはいかないだろう。しかし、本人が突っぱねていれば、ジリンも無理強いはできないはずだ。
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