異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
メグミは持っていた着物をスーツケースに入れてバタンと閉じる。それを見ていたローズベルが先に立って歩き始めた。
「見送ってあげるわよ。ジリン家の馬車が裏口で待っているから。……でも、なんで裏口なの」
「和菓子職人ですから」
「まったく! あなたたちはどうしてそんなに頭が固いのよ!」
ベルガモットと同じにされても困ると思いつつ笑ってしまった。なんだかんだ言いながら、ローズベルはメグミが手に持った小さい方の荷物を持ってくれようとした。しかも見送りなどと言う。
「ありがとうございます。ローズベル様。あの、お世話になりました」
「今生の別れにする気はないわ。粒あんよ。テツシバとやらにも行きますからね」
「……お待ちしています。ですが、小豆はもう春祭りの分くらいしか残っていません。あとは秋になります」
粒あんの魅力にはメグミもかなりやられている。あの味も食感も大好きだ。自分の希望としても、次の栽培はもっと量を増やしたい。
「いつまでだって待つわ。だから、元気でいて」
ローズベルは、綺麗な笑みで見送ってくれた。
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