異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
ベルガモットは店内を眺めながら奥へ来て、メグミの勧める対面の椅子に座る。
「ここがテツシバか。ふむ。小さな作業台に小さな調理場だな。作るものが和菓子に限られるから、これでも十分ということか?」
「はい。私には十分です。動きやすいんですよ。どうぞ、お茶です。それから今日の生菓子です。春ですから淡いピンクの二つ折り花いかだを模してみました。中は白あんです」
若葉に似せた小さな緑のものを上に軽く載せている。
王城では見栄えがとても重視されていたので、ほのかに漂うわびさびタイプの形はあまり歓迎されなかった。いまは己の好みだけを存分に発揮して作っているので楽しさ倍増だ。
「さて、春祭りの打ち合わせをしよう。陛下の望みは、庶民が作れるあんこを使った菓子だ。お前の抹茶パフェは王城が出す出店で売るからそれは避けてほしい。抹茶はないから、ただのシロップになるので“あんこパフェ”と名前を変えた。苺は高価なのでチェリーを考えている」
あんこを強調したいのでその方がいいかもしれない。チェリーは色合い的にも大きさ的にもぴったりだろう。
「王城も屋台を出すんですか? 出店と言うならもう少し大掛かりなのかな」
「テント式になる。あんこを作る実演もそこでする予定だ。専門的に作る方法と鍋一つで煮てゆくやり方の両方を提示する。だから、メグミは自分の方に力を入れてほしいとのことだ」
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