異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「メグミの周囲には、物事に影響を与える人物が集まるのだなぁ……。そういった特別な引力でもあるのか?」
「気のせいですよ」
異世界から来たからかもしれない。が、言わない。
そのあとベルガモットは、大通りに店を出さないかと言ってきたが断った。
「一人では店を回せません。それに、テツシバを出る気もないんです。この店を守りたいから王城を辞したのですから」
「では、大通りの店にテツシバの菓子として卸すのはどうだ。陛下は小豆を売るのに、豆屋に並べさせているが、あんこもそこで売ってゆくことになっている。といっても、和菓子自体を広めることも目的のうちだから、あんこの菓子でなくても良いそうだ。できた数だけをその店に並べる。どうだ?」
「……それはとてもありがたいですね」
これは、コンラートがメグミのことを考えたうえの案だろうか。それとも単純にあんこのためだろうか。訊いても、ベルガモットには答えられないだろう。それにいまさらではないか。
菓子を卸す件については、メグミが直接豆屋と話すことになり、ベルガモットとの話は終わった。軽い足取りで帰ってゆくベルガモットを見送る。背丈からいえばコンラートより五センチほども高いだろうか。
ジリンを始め王城に関わりのある人に会うと、どうしても思い出す。
――逢いたいな。
いまもこれほど恋しい。
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