異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
アルマは泣いていた顔を上げる。メグミはタオルを貸した。ごしごしと顔を拭くので、つい肌の心配をしてしまった。
「私は、夜会を邪魔しようとしたグレイ公爵の幇助をした罰で、王都を追放されます。いえ、それはいいのです。郷里へ帰ります。それで、メグミさん。あんなことをしておいて図々しいとは思いますが、弟を弟子にしてやってもらえませんか?」
「弟子! 私の?」
「ケーキはもう作れないと言っているんです。ですが、菓子を作って食べるのはいまでもすごく好きなんですよ。お願いします。メグミさんの和菓子は、とても変わっていておいしいです。和菓子なら弟も、また頑張れると思うのです」
それだけ言ったアルマは、恐る恐るといった体で手を伸ばし、少々冷めてしまったみたらしだんごを涙ながらに食べる。頬にタレがついた。彼女は顔を上げて少し笑うと、手の甲で頬をこしこしと拭った。
メグミはそれを見て、これこそが己が菓子を作る所以だったことを思う。
辛いとき、哀しいとき、ほっと息を吐いて休む時間のお供になれるような菓子を作りたい。そして、立ち上がるための力の足しに少しでもなったら、それだけで自分の心は満たされて幸せになれるだろうと考えていた。
ずっと和菓子職人になりたかった。殻を割りかけていた卵から、少しは成長できているだろうか。
「私は、夜会を邪魔しようとしたグレイ公爵の幇助をした罰で、王都を追放されます。いえ、それはいいのです。郷里へ帰ります。それで、メグミさん。あんなことをしておいて図々しいとは思いますが、弟を弟子にしてやってもらえませんか?」
「弟子! 私の?」
「ケーキはもう作れないと言っているんです。ですが、菓子を作って食べるのはいまでもすごく好きなんですよ。お願いします。メグミさんの和菓子は、とても変わっていておいしいです。和菓子なら弟も、また頑張れると思うのです」
それだけ言ったアルマは、恐る恐るといった体で手を伸ばし、少々冷めてしまったみたらしだんごを涙ながらに食べる。頬にタレがついた。彼女は顔を上げて少し笑うと、手の甲で頬をこしこしと拭った。
メグミはそれを見て、これこそが己が菓子を作る所以だったことを思う。
辛いとき、哀しいとき、ほっと息を吐いて休む時間のお供になれるような菓子を作りたい。そして、立ち上がるための力の足しに少しでもなったら、それだけで自分の心は満たされて幸せになれるだろうと考えていた。
ずっと和菓子職人になりたかった。殻を割りかけていた卵から、少しは成長できているだろうか。