異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
コランはホッと息を吐いた。

――だめだな。気を使わせてしまうなんて。それこそテツシバの名前が泣く。もっと楽しい話題を、えーっと、不思議な話とか。なにか。あ、そうだ。

「そういえばね。父さんは港や農家やワイン蔵まで出ていたけど、この半年で、粉ひき屋さんが大通りで店を出したの。それから、米屋さんや、醤油を取り扱っているワイン屋さんかできて! びっくりしたわ」

テツジがなくなったことを知らせにあちらこちらを回った。そのときに、できたら王都に店を出さないかと提案したが、費用が掛かると断られている。

「そうか。ならもう、メグミは遠くまで買いに行かなくて済むんだな」

コランは、うんうんと頷きながら聞いてくれるので、思わず弾んだ声で続ける。

「すごく助かるわ。父さんが教えてくれたからって、安く分けてもらえるし。その代り、とくに醤油とかは、どういうふうに使用するのか、何に使うのか教えてほしいと言われたのよ。それで母さんがたまに大通りの店を回って実演しているのよ」

「それで今夜行くのか」

「夕方にね。醤油はすでにお肉のソースとして使っているところもあるらしいわ。だから、今度は、母さんは炊き込みご飯を鍋で造ろうかって考えているの。米も醤油も使えるから。他にもいろいろな料理でどうやって使うかを見せて……」
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