異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「あの、王様のこと軽く考えているわけじゃないですよ。悪口でもないですから。表通りとちょっと危ない下町との間になるこの地域でつつましく暮らしている私の言葉なんて、王様には聞こえませんよね」

あたふたとフォローにもならないことを口走れば、隣でコランが笑っていた。

「な、何が可笑しいんです。そりゃ、補助金とか出しているし、そういえば山の方から水を引いて王都に何本も水路を作ったとか、大通りに赤レンガや平たい石を敷き詰めて整備したとか聞きましたけど、本性は鬼かもしれないじゃないですか」

「いろいろ良く知っているな。鬼か。それだけやってりゃ鬼になる暇もないだろう。慌てなくても、メグミの言ったことは賞賛に値するぞ。耳に入れれば、ふんぞり返って喜ぶんじゃないか」

「ふんぞり返って、って。黒獣王を知っているんですか?」

「顔を合わせたことはない」

否定しながらも、自分の返事が可笑しかったのか声を上げて笑い出したコランを、メグミはぎっと睨んだ。
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