異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
そろそろ昼近くになるのに暖簾を出していなかったことにようやく気が付いたメグミは、急いで立ち上がる。

「コラン様、どうぞごゆっくり。私、仕事に戻ります。暖簾を出さないと」

「子供が多いな」

「この近くの子供たちにとって、みたらしだんごはご飯の替りにもなるんです。上新粉ですからお腹も膨れますしね」

「確かにな。俺も飯の替りに食べている」

二本目に手を伸ばしたコランは、幸せそうな顔をしていた。美味しそうに食べてもらう。メグミは、自分が充足するのをまざまざと感じる。

急いで暖簾を出していたメグミは、彼に何気なく話す。

「下町のずっと奥から来ている子は、みたらし一本が一日の食事になるみたいです。王都は表面ではすごく繁栄していますけど、陰では貧しさが蔓延っていますからね」

それだけ言って、メグミは待ってくれた人たちに向かって開始を告げる。

「お待たせしました。今日は、鬼まんじゅうもあるよっ」

威勢よく声に出す。サユリはショーケースの前で売り子に回り、メグミは焼き箱のうしろに立って、すでに整えておいたみたらしを焼いてゆく。タレはすぐ横に置いた台の上だ。

コランは黙ってメグミを見ていたが、食べ終えたのを機にベンチから立った。
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