異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
美麗で芸術品のような和菓子を哲二に習いたい。腹が空いているときの足しになって力が沸いてくるようなまんじゅうが好きだ。

この店で職人の腕を磨きたいのだから外へ出る選択肢もない。許してもらう他はなかった。

「仕方ねぇなぁ……」

気のせいかもしれないが、最後に苦笑い浮かべて目を細めた哲二はどこかしら嬉しそうだった。

高校に通う間は勉強をしっかりするという約束だったが、いつの間にか作業台に向かっている恵を両親は困った顔で眺めながらも、もう何も言わない。

やがて卒業を迎える。一番のお祝いは、自分の手を掛けた練りきりを作らせてもらうこと、だった。覚えることが山ほどあるのが嬉しい。

師である父親の指導で過ごしてゆく毎日楽しい。
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