異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
夜の帳が下りるころ、サユリが大通りから戻ってきた。メグミはベンチを店内に入れて壁に立て掛け、暖簾を外して四枚の戸を締める。

盗賊などが来ると板戸では心許ないが、他の手立てがないので、いまのところ鍵だけかう。手際よく火箱の中の炭を消して、汚れた部分をふき取りながら、サユリが語る今日の成果を耳に入れてゆく。

視線が向こうまで行き届く歩と開け放っているし、大きくない部屋だから、声も届きやすい。

「醤油ね、良くできていたわよ。鍋では心配だったけど、炊き込みご飯、上手くいったわー。醤油のいい香りがしてね。大通りを歩いている人たちが皆覗きに来たのよ。出来上がりを分けてもらったから、夕飯にしましょうね」

「庭の方を見てくる。ご飯はそのあとでね、母さん」

「早くね」
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