異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
作業場に続くのはサユリが蒸し物をする調理場になる。そこへ入る直前の棚のところに、テツジの名前を書いた板を位牌代わりにして立てている。
どうしても位牌がほしかった。
大きなものではなく、幅が八センチ、高さが十五センチほどで、板の厚みは一センチといったところか。その板に、メグミは“志波哲二”と書いた。
横幅の真ん中ではなく多少左に寄せたところで縦書きしたのは、右寄りの空いた場所に、いずれ“志波さゆり”と入れることを考慮したからだ。サユリがそうしてほしいと主張した。
名前は漢字なので、この世界の人たちは暖簾のカタカナよりもさらに絵に近いものに見えるだろうが、メグミたち以外誰もその文字を読めなくても構わない。サユリとメグミだけが理解できればそれで良かった。
メグミはその前に立つと、店の終わりにいつもやっているように手を合わせる。
「父さん。今日も無事に終わりました。新しい和菓子はもう少し待っていてね。できるなら小豆であんこを作ってからにしたいんだ。ほら、私、粒あんが大好きだから」
ふっと笑って、挨拶を終えた。
サユリは朝早くに手を合わせている。朝晩にしないのは、あまりにも思い出が強く出てきて引き込まれてしまいそうになるからだ。
特にサユリは、テツジの記憶へ意識も心も向いてしまって戻ってこられないかもしれない。最近、そんな危うさを、漂わせるようになっていた。
どうしても位牌がほしかった。
大きなものではなく、幅が八センチ、高さが十五センチほどで、板の厚みは一センチといったところか。その板に、メグミは“志波哲二”と書いた。
横幅の真ん中ではなく多少左に寄せたところで縦書きしたのは、右寄りの空いた場所に、いずれ“志波さゆり”と入れることを考慮したからだ。サユリがそうしてほしいと主張した。
名前は漢字なので、この世界の人たちは暖簾のカタカナよりもさらに絵に近いものに見えるだろうが、メグミたち以外誰もその文字を読めなくても構わない。サユリとメグミだけが理解できればそれで良かった。
メグミはその前に立つと、店の終わりにいつもやっているように手を合わせる。
「父さん。今日も無事に終わりました。新しい和菓子はもう少し待っていてね。できるなら小豆であんこを作ってからにしたいんだ。ほら、私、粒あんが大好きだから」
ふっと笑って、挨拶を終えた。
サユリは朝早くに手を合わせている。朝晩にしないのは、あまりにも思い出が強く出てきて引き込まれてしまいそうになるからだ。
特にサユリは、テツジの記憶へ意識も心も向いてしまって戻ってこられないかもしれない。最近、そんな危うさを、漂わせるようになっていた。