異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「メグミ。御飯よー」

「いま行くわ」

しゃがんでいたメグミは手を洗うために立って洗面へ向かう。

台所と続きになっているダイニング、その奥がサユリとメグミの二つのベッドをうべた寝室だ。そこに水周りへ通じるドアがあり、中は洗面とトイレと風呂になっている。

手押しポンプ付きの井戸があったのは素晴らしいと思う。おかげで、薪式の風呂とはいえ、毎日のように入れた。

元々あった家の中に、店と食品庫が一緒に滑り込んだ形で移動していた。ピタリと入る大きさの分だけが移動したということなのかもしれない。

ありがたいことに、生活に必要な部屋は最低限揃っていたし、店が入り込んでも、家は崩れなかった。

「待たせてごめんね、母さん」

「遅いんだから。冷めちゃうかと心配しちゃったわー」

ようやく向かい合った椅子に座ったメグミを、サユリちょっと睨む。メグミは笑った。こういう子供のような面に接するとほっとする。テツジが亡くなったあとのサユリは、今にも後を追いそうだったのだ。
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