異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「さ、ここが表門だよ。裏門はこの壁にそってぐるっと回った反対側だ」

注意を促されてぱっと顔を向けると、道から少々奥まったところに立派な石造りの門と、両側に立つ門番らしき兵装をした者がふたりいた。顔見知りなのか、門番がエディに『よぉ』と声をかければ、エディは『お疲れさん……っす』と軽い調子で挨拶を返した。

どこまで続いているのか分からない塀が途切れると、馬車が横付けできる場所があり、メグミはそこで降ろされる。

「あの門を叩いて、テツシバの者だと伝えるんだ。連絡をしておいたからね。ほら、メグミちゃんがサユリさんを隣家へ連れて行っている間に、使いを出したんだよ。……門の内側で案内が待っているはずだから」

メグミは、本当に不思議な面持ちで御者台に座るエディを見上げた。

――手際がいいんだ。そりゃ、いきなり訪問しては失礼になるものね。貴族家の人が他家を訪ねるときは、先ぶれを出すみたいだから間違ってはいないんでしょうけど。

エディは笑ってその場から去ってゆく。メグミは訝しく思いつつも裏口へと向かう。今はほかのことを考えるだけの余裕はない。
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