異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
部屋の中で待っていたのは当然、ジリンだ。

軽い挨拶のあと、ソファを勧められて向き合って座る。メグミは三人掛けの長椅子に、ジリンはローテーブルを挟んだ向かい側のひとり用肘掛椅子に腰を掛ける。

彼はいつもと変わらず、にこやかに笑っている。しかし同時に、貴族の、しかもかなり高位の者らしい威圧的な雰囲気も纏っていた。身分の違いとはこうしたものかと、メグミは実感する。
ジリンはすぐに用件に掛かった。

「わしの頼みごとを訊く決心がついたんだね。理由は……サユリさんの薬のためかな」

お見通しのようだった。エディから聞いたのかもしれない。エディはあの町を監視する仕事をしているのではないかと訝しんでしまう。

けれどいまのメグミには、そんなことはどうでもいい。メグミにしてみれば、説明する手間が省けるから話が早くなって助かる。
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