異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
公爵は目を眇めて小さく笑った。メグミはこくりと喉を鳴らして息を呑む。

たしかにジリンは最高権力者に次ぐ地位を持つ者だと肌で感じた。

彼女を上から下まで眺める目線には、柔和で穏やかな公爵というだけではない、値踏みする冷徹さが見え隠れしている。

ジリンは、さもあらん、とばかりに頷きながら話した。

「母親はこの屋敷に引き取って面倒を見よう。世話をする者をつけて、この国一番の医師に診せ、高額の薬も取り寄せて飲ませる。どうだ。これなら問題ないだろう?」

「どうしてそんなに良くしてくださるのですか? 王城で仕えることによる報酬よりも過分になると思いますが」

サユリが静養できる居場所の提供に加えて、最高の医師に薬なら、ジリンの頼みを引き受けられる――どころか、王城の菓子職人としての報酬を丸々渡しても不足するような待遇だ。
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