異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
――私ってバカだ。

メグミ自身がおぼろげにしか自覚していなかったことを、サユリは的確に掴んだ。ここは正直に伝えよう。

「うん。やりたい。あんこが通用するかどうか、この国の最高権力者の舌で試したい」

「最初からそう言いなさいな。それなら、心配をかけてメグミの負担を増やさないようにするためにも、私はジリン様の屋敷でお世話になります」

「母さん……。ありがと」

涙ぐんでしまった。常に子供のことを考える。親は親なのだ。

サユリの提案で、近隣の住民には母親の療養目的でしばらく休業すると伝えた。世話になったからお礼代わりのまんじゅうも手渡す。小豆がまだなので、あんは白だ。

大通りの仕入れ先にも挨拶が必要だとサユリに言われたが、もう少し先にしようと話す。どのみち原材料はそちらからの仕入れになるので、たまにテツシバへ戻ってくることもあると思われた。ちょっと嬉しい。

――風も通さなくちゃいけないものね。
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