消えないで、媚薬。



園庭に響く爽快な音楽。
それぞれ好き勝手に動いちゃう3歳児を上手くまとめるのはやっぱり至難の業。
ベテランの先生を見習いながら今は年少さんのお遊戯練習。
水兵さんになりきってダンスです。




もうすぐ運動会。
近くの私立高校のグランドを借りて執り行われる。
園児たちも一生懸命覚えて頑張る姿は本当に微笑ましい。
大変だけど相当癒される。




かけっこの練習も最初はグダグダだったのに教えるとちゃんとコーナーを走れるように。
小さな積み重ねで日々成長してるんだよね。




通し練習でグランドに何度か行ったけど、まさかとは思うんだが………
いや、本当それだけは勘弁してもらいたいんだが………




「あ、それ俺の高校だから」




顔面蒼白で顎外れかけた。
ニヤニヤしながら「見に行くね」と言われ、鈍器で後頭部を殴られトドメを刺された気分。




「香帆さんの先生っぷり見れるなんて最高じゃ〜ん」




いやいやいや…!!
確かに制服ちょっと似てるなって思ったけど、何もそこまでしなくても良くない!?神様!!
何か、偶然が過ぎるよ〜!




「いや、本当来ないで」




「何で?」




人目を気にしてやっぱり家に入れてしまった。
勿論、彼は私服。
襟付きシャツやTシャツってだけでもこなれたオシャレ感。
こう見ると大人っぽいからやっぱり高校生には見えないかも。




「何でって……当日は休校日でしょ?」




「休校日に行っちゃいけないの?」




そこは言わなくても分かってよ……
暗黙の了解でしょ。
ヤバイ、気を抜いたらまた顔が近付いてくる…!




「休みの日はなるべく香帆さんに会いたい…」




ほら、恥じらいもなくこんなセリフさらっと言っちゃう。
お願いだからそんな瞳で見ないで。






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