消えないで、媚薬。



「付き合ってるんだよね?俺たち」




そして顔覗き込まないで。
普通に手とか握らないでよ。




「香帆さん…?」




「え…?」




「顔紅い……可愛い。これもダメ?」




握る手の甲にキスを落とす仕草。
慣れてる感じがしてその手を引っ込めた。
「からかわないで」と冷たく言い放ったら頬に彼の掌が触れて硬直してしまう。
シラフでこの状況はヤバイ。




「怒らないで?こうして触れたいんだ…からかってなんかなくて本気だよ」




こんな至近距離でからかってないって……
嘘でしょ……
ほら……顔が近付いてくる…!
想定内な流れに顔を背けた。
簡単にキスなんかさせない。
同じ過ちは繰り返してはいけないんだ。




「何で…?俺のこと嫌い…?」




そうよ、嫌いよ!
って言おうとしたのに。
真っすぐ目を向けたら言葉は出て来なくなった。
悲しそうな目……直視出来ない。




「あ、いや……そうじゃなくて、こういうことはまだ避けたいと言うか、避けるべきだよね?お互い素性が分かっちゃった訳だし…これは社会人である私のモラルの問題と言うか…」




「そんなの我慢出来ないんだけど?」




「え…?」




真っ向過ぎる意見。
さすが無敵の高校生。
一切の迷いがない。
そりゃあもう、気持ちいいくらい。




「モラル?何それ。俺の辞書にはそんなの載ってないんだけど?」




「ちょ、ちょっと待った…!」




「待てない」




ソファーの上でほぼ乗り上げられてる。




「ちょっと石川くん…!」





「は?そこは慶太でしょ」




「だから離れてよ…!」




「無理……」




ヤバイ……完全に押し倒されている。
簡単に家に入れた罰だ。







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