消えないで、媚薬。



「あ、すみません…」




「いえ、こちらこそすみません…」




少し酔った体で見上げたからか、相当なイケメンに映る。
整った顔立ち……肌も綺麗……
ふらつく私に「大丈夫ですか?」と声も低くて好きなトーン……




「大丈夫…です」




久しぶりに飲んだからかな。
酔いが回るの早い。
ペコリと頭を下げトイレに向かう。
う……気持ち悪いかも。
少し急ぎ足で中に入った。




化粧室の鏡前で手を付き映る自分を見てる。
フゥ、少し吐いたら驚くほどに正気に戻ったぜ。
仕方ない、どうせ来たんだし飲んだくれてやる。




この判断が間違いだったのか。
愛想笑いで飲んだくれるべきじゃなかった。
終わる頃には千鳥足な私にさすがにさとみも肩を貸してくれる。




「香帆、2次会どうする?って…この感じだと無理だよね」




「ん……帰る」




「待って、タクシー拾うから」




外に出ると風が気持ちいい。
チラッと目が合ったのはさっきのイケメン……
え……?待っててくれたの……?
なんてね。
でもこっち来る……




「大丈夫…?」




2度目の接触。
そうか、この声が好きなのは妙に心地良いからだ。
ポ〜ッとぼやけた視界でも色気のある唇に引き寄せられる。




遠くで「タクシー捕まらない」と焦ってるさとみと合コンメンバーたちのことなど完全に頭からすり落ちていて、本能のまま身体が前に進む。
千鳥足の私に向こうも手を差し伸べてくれて抱きつく形になった。




初対面なのにこんなこと、本来の私なら絶対に有り得ない。
お酒の力だと誤魔化す私は滑稽だよね。
でも動き出した身体は言うことを聞かず彼の頬に手を添える。







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