消えないで、媚薬。



そうやって欲しがってほしい。
真っすぐ見ていてほしい。
この腕の中で私をたくさん感じていてほしい。




フラれるまでの辛抱だって思っていたのに……
私の中のイケナイ部分が全面に出る……
きっとすぐに心変わりするって分かっていても、この腕を振りほどけない。




「香帆さんの嘘つき……」




「うん……ごめん……」




本当、しょうもない嘘………
すぐにバレる嘘………




「俺も、同窓会って聞いてちょっと焦っちゃった…」




「え…?」




「昔の香帆さんのことは分からないけど、今の香帆さん見たら皆きっと好きになりそうだから…手の届かない場所に行っちゃいそうで怖くなった…」




「え、モテ期なんてなかったんですけど?」




「じゃあこれからだ……」




「ないない……」




「いい?誰にも優しくしないで、スキンシップもダメだからね?」




「独占欲凄いね……」




「この唇に触れるのは俺だけだよ?」




また指でなぞられる。
束縛されるのはどちらかと言えば好きじゃないけど、この瞳で言われれば喜びを感じている自分に一番驚いている。





「返事は?」




完全に彼のペース。
それは少し癪に触る。
ここで従えばどんな展開が待ってるのかは分からないけど、私だって我を通したい部分はある。




私の想いは……ただひとつ。




「嫌だ……って言ったら?」




「は?早速浮気すんの?」




「そうじゃないけど……」




キスして欲しい……なんて言えない。
だからって変な空気にしちゃうのも違う気がするけど……




「ていうか、私勝ったのに何でそっちの言いなりにならないといけないのよ」




「じゃあ何?別れるのは無理だしキスしないのも無理」






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