消えないで、媚薬。
「本当に言いなりになってくれるんだよね?」
「うん、負けちゃったからね」
「じゃあ……もうキスしないで」
「えっ!?」
「振り向かない…!あっち見てて」
もう、その瞳見て嘘つけないのよ。
取り返しのつかなくなる前にこっちからもお預け宣言。
うん、これでいい。
これだったら諦めもつくでしょ?
「どうして…?」
無機質な背中が問いかけてくる。
「境界線……ちゃんと引こう?」
「じゃあ何で俺と付き合ったの?付き合うってそういうの含めてじゃないの?」
少し怒った口調。
また振り向きそうになったから肩に手を置いて阻止する。
「ごめん……そういうのはやっぱり私以外でしなよ?嫌なら嫌でこのままフッてくれて構わないし…やっぱ嫌だよね?キスもそれ以上も出来ない彼女なんて…」
「俺は香帆さんだから告白したんだ…ふざけたこと言うなよ」
本当はこの背に抱きつきたい。
お預けなんてしないで、キスして…って言いたい。
振り向かせて私からキスしたい。
もう重症だ………
「悪いけど、それだけは言いなりになれない」
そのまま頭を背中に預けてしまう。
「言いなりになるって約束なのに…勝った意味ないじゃん」
「嫌だ……」
「子供なんだから…」
「香帆さんだって本当はキスしたいんじゃないの?だからあんな顔……」
「もう苦しいの……」
「え…?」
「ダメだと分かっていながらキスするの……だからもう止めよう?」
「嘘だ……香帆さん嘘ついてる…!」
勢いよく振り向かれて無防備な表情。
腕を掴まれて簡単に抱き寄せられることなんか想定内なはずなのに。
駄々をこねるキミにホッとしてる私が居る。