消えないで、媚薬。



自然に手が伸びて前髪に触れる。




「どした…?何かあった?親と上手くいってなかったりする?」




突っ込んだ質問……大丈夫だったかな?
真っすぐな視線はまだ拒絶してない証拠だよね…?




手を降ろしたら隣にピタッとくっついてきて肩に頭を乗せてきた。




「俺が小5の時に離婚して母子家庭だったんだけど、母親も男取っ替え引っ替えでさ……やっと落ち着いた相手と2年前に再婚したんだ…でも何か…仲良くやってるのはいいけどやっぱ俺の居場所なくてさ…再婚だって急に知らされたし」




淡々と話す内容でもない。
でもどこか拗ねた口調だったり力なく笑ったり。
言葉にならない私はただただ抱きしめることしか出来なかった。




「もうどうでもいいやって思ってグレてたんだけど……香帆さんに出逢って何もかも奪われて、ずっと一緒に居たいって思ってたのに…」




「そ、そうですか……」




あの時グレてる最中だったのね……
そういや何となく尖った目線だったような気がする。
あんま覚えてないけど。
髪を撫でながら
「ありがとう、話してくれて」と言ったら逆に「香帆さんの家族は?」と聞かれた。




「私は普通だよ?お父さんは食品会社のサラリーマン、お母さんは専業主婦の傍ら子どもたちにピアノ教えてる。私は一人っ子だしね」




「俺も一人っ子!一緒だ」




やっと夢掴んだ娘が今、高校生と付き合ってるって知ったら両親どう思うかな。
私が親の立場でも……きっと反対するんだろうな。
世間に後ろ指差されるようなことするんじゃないって言われそう。




慶太のご両親は…?
絶対嫌だよね、大事な息子にこんな彼女が居たら。
成人した社会人が未成年に手を出してる時点でモラルに反することだから。







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