消えないで、媚薬。




バカバカバカ…!慶太のバカ…!!
今までで一番恥ずかしかった…!!
あんなグイグイくる先輩たちも初めてだけど、それくらいあちこちに付いてるキスマークが原因だ…!




スクーターを駐車スペースに停めて、マンションのエントランスに向かう。
途中で寄ったスーパーの買い物袋を下げて鍵を出す。
オートロックを解除しようとした私の足はその場で止まる。




それはまるで飼い主を待ちわびた子犬のように。
私を見ては嬉しそうに立ち上がり駆け寄って来る。
クシャッと満面の笑みを浮かべて私の名前を呼ぶの。




「香帆さん…!」




「どうして……キミがここに居るの?」




顔を見ただけで沸々と怒りがこみ上げてくる。
そんな気持ちも無視してズカズカと土足で入って来るのがキミなんだけどさ。




「待ってた」




普通なら見えるわけない耳とパタパタと振る尻尾が見えてしまう状況。
キミは……犬なのか!?




相変わらず小洒落た私服のセンスが逆に腹立たしい。
高校生でしょ?
なんならもうちょいダサくても……
髪型とかも雰囲気も……
どストライクだなんて口が裂けても言えやしないよー!!




「は?待ってた!?約束なんてしてないでしょ」




連絡先知ってるくせにわざわざアポなしで待つか!?




「え?こういうの、ドキッしなかった?」




「違う意味でドキッとしたわ、変質者かと思った」




「え〜?ちぇ、サプライズ失敗か〜」




いちいち顔近づけないで…!




「あっ、買い物行って来たの!?何か作るの!?ヤバっ、お腹すいてきたー」




「はっ!?もしかしてあがり込もうとしてる!?」




これ以上隙は作れない。
私にとってはリスクありまくりだから。




「え〜お願い!」




「ダメ」




後ろの方からコツコツとヒールの足音が聞こえてくる。
マンションのエントランス内であーだこーだ言い合ってる私たち。
「こんばんは」と声をかけてくれたのは同じマンションに住むお隣さんで女性の方だった。
挨拶する程度の関係だけど完全に顔見知り。




ヤバい、この状況は変に誤解される。
何としてでも追い返さねば。
って言ってもどうすれば……







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