消えないで、媚薬。




「お願い、姉ちゃん!飯だけ食わさせて!今月ピンチなんだ!」




え……!?今、なんて!?
ね、姉ちゃん!?




施錠を解除したまま
「あの、入りますか?」とお隣さんが待っていてくれてる…!
この場合は合わせるしかない、よね?




「入ります!すみません!」
と言ってスタスタと入って行く二人。
ていうか何でキミが率先して先頭なの。
「サンキュー姉ちゃん」とか逆に不自然過ぎない?
そう言う私も「今日だけだからね」とか念押ししちゃってるし。




お隣さんだからエレベーターも降りる階も一緒なわけで。
だいぶ気まずい。




「ねぇ、何作るの?」




キミだけは何故かこの状況を楽しんでるよね。




「うーん、どうしよっかな〜?ていうか連絡くらいしなよね」




「はーい、いざとなれば頼れるの姉ちゃんだけだから」




ちょ、調子が狂う……
笑顔で姉ちゃんって……
状況が状況なだけに致し方ないが、
ちょっとだけ胸がズキズキ痛む。
やっぱり周りからはそう見えるってわけだもんね?




階ボタンの前に立っていたお隣さんがクスクス笑う。




「姉弟で仲良いんですね?羨ましいです、私ひとりっ子なので」




「あ、そうですか、ウザったいだけですけどね」




「うわ、ひでぇな〜こんな可愛い弟この前友達に自慢してたでしょ」




「はっ!?何言って…!」




勝手に話を盛るな…!!
知らない人が相手だからって調子良いことばっか並べて!
もう階着いちゃったよ!





「じゃあここで」と会釈して互いの部屋に入ろうとした時。
またしてもキミは余計なことを。




「あの、ここのマンションって壁薄いですか?生活音って聞こえてきます?」




な、何聞いてんのよー!!




「え?うーん、多分聞こえてないと思いますよ?気にならないし」




「いや〜姉ちゃん結構音出してゲームしたりするんで迷惑かけてなかったらいいんですけど」




今度はゲーマー扱いかよ。
小さな嘘を自ら大きくしないで。
ほら、また笑われてるじゃん。




「全然聞こえてませんよ、ていうか逆に私も迷惑かけてませんか?台詞の練習してたりするんで」




「「えっ!?」」








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