家族の紐帯
「目くそ鼻くそを笑う」とはまさに母のためにあることわざだ。是非母には一つ「他山の石」という言葉を覚えてもらいたいところだが、母がその意味を真に認知できれば私がここで紙面を割いて母の悪口を言う必要はないのだ。ここで「悪口」と言ってしまうと、普段の母の言動がすべてそのような見方になりかねないのでできれば控えたいところだが、外に言いようがないのであえて使わせて頂く。だが、決して世間一般的な「悪口」ではないことにご留意頂きたい。これはあくまで病魔に冒された母の行動分析の一環なのだから。
 前置きが長くなってしまった。本題に入ろう。さてここでの事例は、「夜間の携帯電話の使用」についてである。私には高校来の友人がいて、時折電話で話をするのだが都合上夜10時過ぎになることが多い。母はだいたい11時頃睡眠薬を飲んで寝るのだが、その日は電話の声が不幸にもその眠りを覚ましてしまったらしい。誰でもそうだろうが母は途中で起こされるとすこぶる機嫌が悪くなる。結局0時を過ぎても母の寝室の電気はつけっぱなしであった。
 「お母さん、まだ寝ねんだが。」友との充実したおしゃべりを終え、30分ほどしてから控え目に私が問う。電話の声が母を起こしてしまったという負い目があって最初はつけっぱなしの電気を注意することができなかったが、いつまでもそのままでは今度は私がその明るさで眠れなくなる。できることなら話しかけたくはなかったのだが・・・。
 「薬飲んだんだけど電話の声がうるさくて、寝られねっきゃ。」返す母。
 「夜遅くに電話するのはやめて。」
 「ああ、ごめん。俺も声を抑えて話してたつもりなんだけど。」
 「それでも笑い声とかうるさくて寝れねっきゃ。」深夜はとくに音が響く。実際耳障りなのだろう。
 「なんで夜遅くに電話しねばまいねんだっきゃ。やめればいいっきゃ。」
 不機嫌さをあらわにした口調で非難を繰り返す母。どうして夜遅くに電話せざるを得ないか、そこを斟酌する余裕は彼女にはない。その一方的で突き放すような言い方に喧嘩を売られてるのかと私はだんだん逆上してくる。(舌鋒鋭く俺を批判するが、お母さんだって夜遅くまで音楽聴いたりしてることあるじゃないか。俺がそれをいちいちとがめるか?「たまには」仕様がないと黙認してるだろうが。俺だって毎日電話してるわけじゃないんだ。
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