ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



その瞬間、伶菜は谷本さんの腕の中で両肩を震わせた。

「なんで?伶菜さんがいるのに奥野先生となんて・・」

そんな伶菜をなだめるように彼女の背中を優しくトントンと叩きながら
谷本さんはそう呟いた。



「なんか理由があるんですよね?」

『・・・・・・』



伶菜が肩を震わせた姿を目の当たりにしてしまった俺は
誤解を解こうと何を言ってもただの言い訳になりそうに思えた。

それが余計に伶菜を傷つける
・・・そんな気もして
谷本さんの問いかけに全く返答ができなかった。


「日詠先生、どうなんですか?!」

『・・・・・・』


そんな俺がじれったくなったのか
谷本さんは鋭い視線で俺に迫った。

そんな冷たい空気までも感じ取っていたのだろう。
伶菜も微動だにしないままで。



「日詠先生、黙ったままなんて、、、ガッカリです!!!!」


俺に向かってそう言い放った谷本さんはギロリと睨みつけ、相変わらず俺のほうを見ようとしない伶菜の手を引いて仮眠室のほうへ連れて行ってしまった。


一方、俺はその場に立ち尽くしたままで。
結局、俺は
彼女を引き留めて言い訳できなかった。
誤解を解くどころか余計な誤解を招いた。

でもきっと今、俺が伶菜に何を言っても
多分、上手く伝わらないだろう
情けないけれど・・・そう思った。



「されどキスだったな、やっぱ。」


先に医局から出て行ったはずなのに
いつの間にやら俺の後を追いかけてきたらしい森村が
後頭部の後ろで両手を組み合わせたまま、どや顔でそう声をかけてきた。



「オンナを簡単にオトしまくる百戦錬磨のオトコにもちゃんと落とし穴が用意されてたんだ・・・・やっぱ神様っているんだな~。」

『・・・・・・・・・・』


いつもの俺なら、“うるせえよ” って突っぱねるところなのに
すっかり意気消沈状態だったこの時の俺はそんな余裕すらなかった。



「キスとか、やっぱアウトだよな~」

森村は容赦なく俺に追い討ちをかけてきて。

いつもならほとんど聞き流してしまうコイツの言葉に
簡単に惑わされてしまうぐらいこの時の俺は
地に足がついていなかったに違いなかった。


「でもレイナはさ、その辺のつまんないオンナどもとは違うぜ。」

『・・・・・・・・』


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