ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活





「日詠先生、あんなにも伶菜さんしか見えてないから・・・絶対大丈夫。きっと事故みたいなもんですよ~、奥野先生が転びかけた拍子に唇が当たったとか。」

伶菜の背中をそっと撫でている谷本さんの声が聞こえた。

その後も谷本さんが伶菜に声をかけていたが、伶菜は谷本さんに抱きかかえられたまま泣いているだけだった。


彼女をそんなにも泣かせてしまったのは
間違いなく俺・・・に違いなかった

森村の言った通り
昨日の夜、奥野さんとあった出来事が
伶菜の耳にも届いてしまったのだろう




「日詠先生!!!!! 看護師の岩田が見たって言ってた奥野先生とのこと、本当なんですか?」

そして伶菜に向いていたはずの谷本さんの視線が俺のほうに向きを変えた。
いかにも “それは違う” と言わせたいような問いかけを添えて。

その流れに任せて
伶菜の中にあると思われる誤解を解きたかった。


昨日、奥野さんと交わしてしまったキス
それは
されどキスではなく、たかがキスだったこと

俺の中での大切なキスは
いつでも
伶菜と唇を重ねるキス、ただそれだけであること

・・・・・そう伝えたいのに




『・・・ああ。』

この時の俺はただ肯定することしかできなかった。



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