ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



けれども
俺が勝手に予測したそんな私情

目の前にいる人物
・・・伶菜からは
まったくと言っていいほど
感じられなかった。

そんな彼女の様子に
どこか安心してしまった俺。



『依頼処方箋だ。カウンセリングの。』


彼女からのやや躊躇いがちな問いかけに冷静に応えた。


「私なんかでいいんでしょうか・・・・」


『どういう意味?』


でも

言葉を交わして
戸惑う声を耳にして
彼女の表情を窺ったら
その根拠のない安心感は一瞬にして消えた。


昨日の夜のことを一切口にしようとせずに
仕事のことだけ口にしようとする伶菜の
揺れ動く瞳を目の当たりにしたから。


それなのに


「でも、大変そうな患者さんなんじゃ・・」

『確かに大変な患者、だろうな。』


なんでこんな時でも
俺はこういう対応をしてしまうんだろうか


本当ならば
ますは昨晩の俺の不手際を謝らなきゃいけない
伶菜が納得できるような言い訳してやらなきゃいけない
そして
この症例のカウンセリングを担当してもらうことについて丁寧に説明するべきだと思う
それなのに
どうしても上手くできない



「私なんかでは対応できない、の、、では・・」

今にも泣き出しそうな顔を覗かせた彼女。


それでもなお、励ましたりすることなく
短めの言葉で冷たく切り返す
・・・・どうしようもなくダメな俺。


「やるんだ、キミが。」



彼女に対しそう声をかけ、俺は彼女の前を通り過ぎて、TTTS症例のデータを探すために書庫のほうへ歩き出した。

でも、伶菜が動く気配はなくて。


静かな資料室内
俺と伶菜

ふたりでいるのに
いつもとなんら変わらないウイ~ンというパソコンが起動している独特の音だけが
逆に耳についてしまうぐらい
室内は静まりかえっていた。


“伶菜なら大丈夫”
“伶菜じゃなきゃ、この妊婦さんは対応できない”
“俺がちゃんと見ていてやるから”


なんでそう言ってやれないんだろう?

心の中ではイヤというほど
その想いを反芻(はんすう)しているというのにな・・・




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