ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



そんなことを思っているうちに
伶菜がこっちに向かって歩いているような気配を感じた。

どう言葉を交わしたらいいのか思いつかない俺は、慌てて近くにあった分厚い本を手にとりページを捲る。
でも身体は正直で、指が空回りしてページを上手く捲ることができなかった。

そのうちに彼女が俺の傍に近付いて来ていた。
とうとうそちらを向かなくてはならなくなる。
絡み合う視線。

彼女の瞳は
哀しそうな色を纏っていた。

彼女がそうなることなんて予測していたはずだったのに
それなのに俺のココロは明らかに揺れていた。


『・・・・・伶、、、』

「・・・・・・・・・」


彼女の名前を口にしたのに
伶菜は視線を外して、俺の前を通り過ぎた。


そして、2、3歩歩いて止まった彼女は
【月刊:産婦人科スタンダードジャーナル6月号:特集:双胎間輸血症候群 その診断と治療】
という医学雑誌を手にとり、立ったままその本を開き黙読し始めた。


真剣な眼差しで本を読み続ける彼女。
俺の存在なんてまるで気にする様子もなく。
それぐらいの集中力を見せ付けられた。



まぎれもなくその姿からは
患者さんに真っ向から向き合おうという気持ちがしっかりと伝わってくる。

あんな哀しそうな目をさせてしまうぐらい
彼女を傷付けてしまったはずなのに

今からでも
森村が忠告したように
上手な言い訳をしてやればいいのに

それをしようとしないそんなズルイ今の俺とは仕事なんてしたくないはずなのに

それなのに
伶菜はちゃんと前を向いているようだった。



「・・・・ナオフ』

『えっ』


手元の雑誌から目を離さないまま俺を呼ぼうとした伶菜。


「日詠先生、私・・・」

『・・・・・・・』

「やります。この症例。」



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