ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's eye カンファレンス: intensive care unit



【Hiei's eye カンファレンス: intensive care unit】



『今まで俺は・・・・何をやってきたんだろうな・・・伶菜がこんなことになるまで・・・・』


ICU(集中治療室)の前にある家族待合室。

ICUに入室したばかりの伶菜と面会できる許可が下りるのを
ベンチに腰掛けてじっと待っていた。


誰もいない待合室。
聞こえてくるTV番組の音もただの雑音にしか聞こえない。




『半日前は・・・一緒に陣痛室にいたのに・・・・』


ベッドの上でエビのように丸くなり苦しそうに陣痛を堪える彼女
陣痛の合間に “まだまだかな~” と笑う彼女
腰をさすってやると “気持ちいい” とお礼を口にする彼女
福本さんに預けている祐希が大人しくしているか気にかける彼女

いろんな彼女と向き合った。
とても大切な時間だった。




1時間前には彼女と分娩室にいたのに・・・・


分娩台に上がるまでは陣痛を堪えながらでも元気だったんだ

でもいざ、分娩台に上がったら息づかいがおかしかった

そこから彼女の顔色があっという間に青くなっていった

俺の手を握り返していたその力も弱々しくなって



新しい命が生まれる時が近づくにつれて

今あるかけがえのない命が波に引かれるように遠ざかる感触を
俺の目で

そして
俺の手で

・・・・・・感じ取った




何も考えられなかった


伶菜が俺の前から消えてしまうかもしれない・・そんな状況で
俺は自分を見失った




そんな俺を
伶菜は見抜いていたのだろうか・・・・?






“ナオフミ、、、さん・・・・た、、、す、、、、、け、、、、、、、、、”




俺に足りなかったもの
・・・・自分の手で彼女を救うこと



ずっとココロの奥にひっかかっていたそれを
自分で引きずり出せないままでいたそれを
彼女が導いてくれた



ようやく
俺の目がとうとう覚めた




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