ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



そこからの俺は
指示を出すこと
処置をすることに集中していて

自分の気持ちがどのように揺れていたのか
覚えていられなかった




ただ彼女の命を新しい命を救うこと

シンプルだけど最も難しいそれに
集中するのみだった



そんな中
赤ん坊は生まれた

伶菜と俺の血が流れている赤ん坊の泣き声は聞こえなかった


その赤ん坊に対して
小児科医師でない俺ができることはなく
父親である俺ができることは “どうか助かってくれ” と願うことだけだった



しかも
産科医師として動き始めていた俺は
NICU(新生児集中治療室)のドクターに託すしかないと
今は彼女を救うことに集中しろと
自分に言い聞かせた



最善を尽くしたはず・・・・だった。





けれども



伶菜は目を覚まさないまま

彼女は俺の手を離れた。


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