ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「バカね。ちゃんとやれていた。」
『・・・・・・』
「日詠クンは自分がすべきことちゃんとやれていたわ。」
自分のふがいなさの行き場が見つからない。
大腿(ふともも)の上で、掌に爪が食い込むくらい強く拳を握っても痛みなんか感じなかった。
「やめて!!!! 怪我するわよ!!!!!」
『・・・伶菜はあんなにも痛がったり、苦しがっていたのに俺は・・・・それを感じることもできない。』
「・・・日詠クン・・・・」
このまま奥野さんとここにいたら
俺を励まそうとしている奥野さんまで
傷付けてしまいそうで。
『すみません。ひとりに・・・・ひとりにしてもらえますか?』
「・・・・日詠クン?!!!!!」
顔を歪めた奥野さんに
もうこれ以上心配をかけたくなかった。
『もう無茶なマネ、しませんから。』
励ましなんていらない
ただ自分の無能さを懺悔する時間が欲しい
ココロの奥にひっかかったままの傷を
自分でもっともっと深く傷つければいい
そんなことをしても
伶菜が戻ってくるなんて保証はどこにもないのに
自分も苦しさというものを味わったら
少しでも彼女の苦しさも請け負えるのではないか?
そんなことが頭を過ぎりそうせずにはいられなかった。
それでも
やっぱり時間は流れていて。
「日詠伶菜さんのご家族の方ですね?」
『ええ・・・』
「面会の準備ができました。主治医からもお話しがあります。どうぞ、こちらへ。」
『・・・ハイ。』
俺は受け取ったばかりの白衣の入った紙袋を待合室に置き去りにしてICUの中へ入って行った。
この時の俺は周りなんて何も見えていなかった。