ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
担当看護師らしき人の後ろを付いていくしかない俺は
そのままICUの一番奥に連れていかれた。
伶菜がいるらしいベッド。
その周囲はカーテンで仕切られており彼女の姿は見えない。
そんな中、突然カーテンが揺れ、俺は息を呑んだ。
「心室頻拍はなんとかおさまりましたが・・・・心肺へのダメージが大きくて・・・」
『・・・それって・・』
「・・・・この1~2日がヤマです。」
ICUでの伶菜の主治医らしき人物が聴診器を首に掛けたまま
カーテンの中から俺の前に現れた。
『・・・・・・・・・』
あと1~2日がヤマ・・・・
人が通れる程度に開かれたカーテンの隙間。
そこから見える伶菜の、人工呼吸器を装着している姿を直視することができず
思わず目を逸らした。
その姿を予測していたのに
現実が受け入れ難かった。
「我々は最善を尽くします。」
緊張感を伴う表情でそう言ってくれたICU医師。
あと1~2日がヤマという言葉からも
伶菜の容態がかなり厳しい状態であることがわかったが、
この時のその医師の表情からも
それを改めて痛感させられた。
ついさっきまで俺は伶菜の蘇生をしていた
蘇生中は
彼女の命を救うためにできることはちゃんと行えていると認識していた
それなのに
彼女の命はあと1~2日がヤマという現状
俺が伶菜に向き合った時
・・・・何が足りなかったんだろう?
・・・・どうしたらよかったのだろう?
もしも自分でない医師が処置していたら
こんな危ない状況に陥ることはなかったかもしれない
そんな医師、どこにいるんだ?
もしも伶菜がそんな医師ではなく
俺みたいな実力を伴わない医師に処置されたら・・・・
今度こそ本当に命が危ないかもしれない
彼女を救い切れなかった俺がそんなことに拘る立場ではないことはわかっていたけど
『・・・最善ってどれくらい・・・・どれくらいなんですか?』
「・・・・・・」
彼女の家族という立場では
目の前にいる医師が適切に処置してくれるかどうかを拘らずにはいられなかった。
自分だって “最善を尽くす” という言葉を患者さんの前でよく使うのに
その言葉の信憑性を疑いたくなった。