ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


あっという間に関係者らしき人発見。
それは白衣姿の見知らぬ男性。

ドクターか、それとも薬剤師・・か?
遠目からだけど、悪いこととは無縁そうな真面目な人間に見えるんだけどな

まあ、なんのために彼が塩酸モルヒネを無断で大量持ち出ししたかわからないけれど
理由はどうであれ、あとは監査室が調査し対応を考えるだけだ

今の俺はそれどころじゃなくて
ウチに帰らなくては・・・・


『美咲、オレ、今度こそ帰る。』

「今度こそ早く帰らないと、高梨さんと待ち合わせなんですよね?日詠先生、珍しくソワソワしてますしね。」


ソワソワか・・・

見抜けれてるなんて
情けないな、俺

それでも

“高梨さん”と待ち合わせじゃなくて
“伶菜”のいるウチへ帰るんだけど・・・


そうか
美咲にも伶菜と俺が結婚してるコトを伝えてなかったな

昼間の産科病棟で冷静さを欠いていた俺は
俺の恋人についての話をする看護師さん達や
伶菜に遠慮なく触れる森村とかには
その事実を聞かせてやりたいと思ったけれど

美咲には今でも言いにくい

彼女は一度は俺に“好きだ”という想いを打ち明けてくれたから
それなのに
“伶菜じゃなきゃダメなんだ”という言葉を投げかけてしまった相手だったから

大切な想いを俺に聞かせてくれたのに
俺はそんな彼女を傷付けた


それなのに

その後も、以前と変わらない様子で人手不足な産科で頑張ってくれて
信頼できる“後輩”になってくれた美咲に・・・・感謝している


『まあな・・・』



だから、ついさっきの美咲からの問いかけには曖昧な返事しかできなかった
現在の美咲が自分のコトをどう思っているのか
今ひとつ俺には理解できていなくて

本当に情けないけどな・・・


「ほらほら、急いで下さい。もう7時過ぎてますから!」

美咲に勢いよく背中を押され、“それどころじゃない”俺は彼女の表情を伺えないまま、慌しく会議室を出た。


でも、今日のこの出来事を“それどころじゃない”と思っていたことが
・・・・・実はそうでなかったコトを
俺は後々になってイヤという程思い知らされることになる


そしてそれが福本さんが発したあの言葉の始まりだったコトも




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