ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
病院を背負うとか
そんなの
俺じゃなくてもいい
俺が守らなきゃいけなかったのは
泣きながら震えていた彼女なのに・・・
江草さんに挑発され冷静さを失いそうになった俺は
そんな彼女を壊したりしないように
せめて包みこんで安心させてやりたいと
今度はできるだけ優しく抱きしめた。
その場を通りかかる人達の視線なんか気にすることなく。
『伶菜、帰るぞ。一緒にウチに。』
まだ朝なのに
ついさっきIDカードを出勤レコーダーに通したばかりなのに
今日は外来診察の日なのに
美咲に学会発表用の原稿のチェックを頼まれていたのに
そんなコトはお構いなしになった無責任な俺
これも伶菜と再会する前には
あり得なかった自分だったりする
それでも
彼女の傍にいたかった
けれども・・・・
「・・・・大丈夫だから・・・ナオフミさん、今日、外来診察の日でしょ?」
俺の腕の中にいた伶菜がか細い声でそう言った。
『そうだ。でも・・・』
この時の俺は外来診察よりも
この時の伶菜を放っておくことができなかった。
ガバッ・・・・
それなのに伶菜は勢いよく俺の胸から離れた。
「妊婦さん達が、待ってるから・・・・だからもう行って下さい。」
頬には涙の跡がくっきりとついているのに
それでも伶菜は笑った。
『私は、大丈夫だから・・・・』
「・・・・・・・・・・」