ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



臨床心理士という言葉を耳にしたせいなのか
地に足がついていない感じだけでなく
誰かに胸がズンと踏みつぶされそうな感覚に襲われる

でも心配かけちゃいけない
臨床心理士という仕事としっかり向き合わなくてはいけない
自分で解決しなきゃいけない問題だから



『・・・・いえ。』

「そっか。ならいいけど。」

穏やかな声でそう言ってくれた入江さん。
その直後、電話越しに沈黙の時間がしばらくの間流れた。


無理矢理聞き出そうとかしない
入江さんの声も聴こえない
だけど
受話器の向こう側からは優しく包み込まれる空気感だけが
伝わってきて・・・・


『あの、私、、、、どうしたらいいんでしょう?』

私は入江さんに
甘えずにはいられなかった。



「もしかして・・・日詠とのコト?」

私が悩んでいる内容を察知しているらしいのに、声色が全く変わらない入江さん。


『・・・・・・・ええ。』


この人は私よりも “耳を傾ける” という作業が上手いと思う
言いたくなるから・・・
ココロの中でぐちゃぐちゃになっていることまで



『実力が伴わないんです。私』

「・・・・・・」

否定の言葉もなく黙ったままの入江さん。


『臨床心理士として従事できるように、ナオフミさんにこの病院まで引っ張ってきてもらったんですけど・・・・』

「・・・・・・・」

『ちゃんと役に立ってなくて、きっとこのままじゃ、ナオフミさんの足も引っ張ってしまうんじゃないかって・・・・』

「・・・・・・・」


慰めの言葉とかもなくて。



『だから私、、、、、、、』


「いいんじゃない・・・それで。」




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