お前は、俺のもの。
──どうしよう。怖い。
両手が震える私に、鬼が言った。
「一人で外出するなら、行き先を言え」
「ご、ごめんな…さ…」
怖すぎて、声が掠れる。
鬼課長の吊り上がった逆三角形の目は、次第に目尻が下がっていく。
「お前がいなくなって、ショールームまで探しに行った」
「す…すみません…」
「電話をしても出ないから、外へ出て辺りを探した」
「ご、ご迷惑、を…」
ギリギリと、鬼の指が肩にくい込んでいき、痛さで視界が滲む。
ふわり。
両肩のじんじんする痛みを残したまま、彼の両腕は私の背中へ回された。
まるで壊れ物を扱うように、優しく、ぎゅっと。抱きしめられた、私の体。
「はああぁぁ…。マジ、心配した」
耳元で、脱力したように長い息を吐いて呟いた、鬼の低い声。
顔が密着している、彼の広い胸も。
体をしっかり抱きしめてくれる、彼の頼れる腕も。
首すじに埋めた唇が熱く触れている、彼の顔も。
「凪…」
そして、この声も。
彼の温もりが、こんなに心地良いことを知ってしまったら。
──好きになってはいけない人なのに。