お前は、俺のもの。
午後からの仕事は比較的落ち着いて、データの入力も入金のチェックも問題もなく進んで終わっていく。
隣のデスクを横目でチラリと見ると、鬼課長はパソコンで何かを調べたり、図面を広げて電話で会話したりと忙しそうにしていた。
仕事の区切りがついたので、お手洗いに行こうと立ち上がる。
──あ、ついでにカフェオレを買おう。鬼課長のコーヒーも買おうかな。
私は鞄から財布を取り出し、そっと席を立とうとした。
「どこへ行く」
上から降り掛かってきた、低い声。ひんやりと冷たい何かが、背中全体に広がった。
ああ。
誰もいない個室で長いため息を吐く。
──もう、トイレだって言っているのに。
手洗いを済ませて戻ってみると、二メートル程離れたところで壁にも垂れて腕を組む鬼と目が合った。逆三角形の目が私から逸れると、自販機へと歩き出す。
動かない私に気がついたのか、振り向いて「こっちに来い」と、目で訴える鬼課長。