お前は、俺のもの。

カフェオレを手渡されるまで、彼と私の間に会話はない。私もあの甘く抱きしめられた後で、何を言っていいのかわからない。

「凪」

事務所に戻る廊下で呼ばれた。
立ち止まって見上げると、彼の整った顔が私に向いていた。
特に怒っているわけでも、笑っているわけでもなく。ただ、
「今日、仕事が終わってからの時間を、俺にくれ」
と、ポツリと言った。

「…はい」

そう返事してしまったのは、いつもの迫力のある逆三角形の目が、珍しくしおらしく見えたから。


先に事務所へドアを開けて入っていく鬼課長の後ろ姿を見て「ん?」と思う。


──今日って、レセプションパーティーは?


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