お前は、俺のもの。
出来上がりの私を見た副店長が、
「とてもステキですよ」
と、微笑む。
少し頭を下げて「ありがとうございます」と答えた。
少し席を外していた鬼課長が戻ってきた。
「凪」
「……」
呆然とした。
ライトグレーの三揃えのスーツを着こなし、ネクタイピンやカフスボタンのパールが柔らかく輝いて、夏の涼しげな印象を与えている。そして濃紺のネクタイが全体を引き締めているように見える。少し直した髪型も凛とした顔に色気を与えて似合っていた。
王子様だ。
見惚れる、とはこのことなんだと思った。
自分が呼吸をしているかどうかもわからない。
「おい、凪」
低い声で呼ばれて、ハッと現実に戻る。
「大丈夫か?」と、聞いてくる鬼課長の右手には、白い箱を持っている。私が不思議そうに見ていると、
「お前につけてやろうと思って」
と言いながら、箱のフタを開けた。
仄かに淡いピンクの輝きを放つ、艶やかな大粒の真珠のネックレスとイヤリング。
「うわぁ…」
その美しさに、ため息しか出ない。
しかし、確実に高価な宝石であるのは変わりない。
「ステキです。でも、私には勿体ないです」
──これ以上は、私の給料では払えなくなってしまう。
ここで購入するものは、全て自分で払おうと決めていた。ドレス、バッグ、靴くらいなら分割払いかボーナス払いで何とかなるかもと思っていた。しかし真珠のアクセサリーまでは、さすがにお財布事情が厳しい。
「あの、一ノ瀬課長。お気持ちは嬉しいのですが、真珠は高価なので今回は…」
「見送ろうと思います」と言おうとする前に、鬼課長の横顔が、
「俺が欲しいと思ったんだよ」
と、言った。