お前は、俺のもの。
「ごきげんよう。先に中へ入って行かれたかと思ったわ」
聞き覚えのある声に、体にグッと力が入る。
ズラリと並んだ高級車から現れたのは、大人の色気を引き立たせる黒のドレスをセクシーに着こなした千堂紗羅だ。
艶のあるストレートの長い黒髪を靡かせて、少し派手めな顔立ちに似合う口角を少し上げた真っ赤な唇に、私の体がゾクゾクと震えた。
私がビクビクしていることに気づいたのか、鬼課長がピッタリと横に立ち、腰を抱く手を更に力を入れて私を引き寄せた。
「こんばんは。今日はあなたをエスコートする約束はしていないと思いましたが?」
鬼課長も逆三角形の目を細めて、大人の対応に努めているようだ。
千堂紗羅は黒のエナメルバッグを反対の手に持ち替えて、こちらへ一歩近づいた。
「あら、こういう華やかな場には近しい「華」のある相手を連れていかなきゃ」
と、彼女の目がチラリと私を向いた。
「あなた、ショールームにいた人よね?頑張って着飾ってらっしゃるけど、所詮身体に染み付いた地味さは隠せないのよ。その真珠だってステキだけど、幼い顔のあなたには無理しているように見えるわ。多分、私の方が似合ってるわ」
きっと年下であろう彼女に散々ディスられてしまった私。三十年、地味に目立たないように生きてきただけに、何も言い返せず黙って俯いた。