お前は、俺のもの。

その堂々と人のマイナス面を口にしてしまう千堂紗羅は、きっとそれだけ自分に自信があるのだろう。もし、それが彼女にとっての強さなら、私にはないものであり、少し羨ましくもあった。
そんな呑気なことを考えていた隣で、鬼課長は表情を崩さず千堂紗羅を見ている。彼女も鬼課長へ視線を戻す。軽く微笑みを浮かべているが、少し焦りを感じているように見える。

「あなたが仕事熱心なのは存じています。このイベントもあなたがお仕事の一環と言うのなら、その女性を同伴することも許されることでしょう。でも、会場にはプライベートで出席されている方々もたくさんみえますのよ。私はあなたの婚約者。お仕事でありプライベートであり、私と一緒の方が婚約者として紹介することも出来るんじゃないかしら。私も父の会社の宣伝塔の役目も出来ますもの」
真っ赤な唇の動きが止まり、黒いドレスが近づいてくる。

私は彼女とこの場にいる空気に耐えられず、さっきから体が震えっぱなしだ。
鬼課長の腰に添えられた手がなくなったと同時に、目の前に彼の背中が広がった。

「言いたいことは、それだけですか」

鬼の声色が変わった。
彼がどんな顔をしているかわからないが、その低く冷たい声に怒気が含まれていることは、ハッキリわかった。
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