お前は、俺のもの。

「私はよく考えてください、と申しているんです。あなたは三男であれど立派な一ノ瀬家の御曹司ですわ。立場ある家柄に生まれたからには、それ相応の家同士の繋がりを作ることも私たちの役目。それくらい、おわかりでしょ?」

千堂紗羅の言葉を鬼課長の後ろで聞いていた私にとって、同じ女性として悲しいことだと思った。

──家柄のために、家同士のために結婚することが一番で、自分の気持ちは二の次だっていうの…?

少なくとも千堂紗羅はきっと、家族からそう教育されて生活してきたんだろう。
今の世の中、身分が高かろうと低かろうと、誰にでも自由に人を愛する権利はあるというのに。

すると、目の前の背中がクスリと笑った。
「あなたの言いたいことはわかりますよ。俺もそこまで馬鹿じゃないので。でも今回は俺が婚約者であるにも関わらず、少しハメを外し過ぎましたね」
と、何か企みの見え隠れする感じの鬼課長の声。
「なんのことですの?」
千堂紗羅の声のトーンが下がった。
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