お前は、俺のもの。

「行くぞ」

彼らを見つめていた私に、鬼は肩を抱いたまま促す。

──もう、大丈夫だ。

そう、言っているようだった。

鬼課長に「無類の男好き」と言われた千堂紗羅。彼女がどんな生き方をしているかなんて私にはわからない。けれど写真にあった彼女の顔は先日のショールームで鬼課長に見せたものと違い、仮面を外して男性に甘えて素直に笑っている気がした。
今回は甘える相手が悪かった、と思うしかなかった。


お店全体を照らすようにライトアップされたカフェの外観を目の当たりにして、私は大きく息をついた。
白い壁、白いテラス、大きな窓、赤いオーニング。ヤマボウシの木でアクセントをつけた店構えは、いつかテレビで見た、パリのシャンゼリゼ通りのカフェを思い浮かばせる。

「すごく、ステキなカフェ」
「だろ?オーナーは優しい人なんだけど、頑固で拘りが強くてさ。俺もかなり振り回された」
と、鬼課長が珍しく苦笑している。

──ええ?この鬼を振り回すなんて、オーナーってどんな人?

オーナーの人物像に、少しの恐怖を感じた。

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