お前は、俺のもの。
「あの、私ばかり食べてしまって…ご馳走様でした。ありがとうございました」
お店の外でペコペコと感謝する私。
もうこの先、二人で食事することはないだろうと思っていたので、素直にお言葉に甘えてしまった。
黒い財布をスッとジャケットの内ポケットに収める姿が、なんともスマートで様になっていた。
きっと彼のことを何も知らない女性なら、瞬間に恋に落ちてしまうだろう。
「じゃあ、私は電車なので」
と、鬼課長と距離を置こうとした。
「満島」
彼の低い声が耳に届く。目が合うと彼は口をへの字に曲げて、逆三角形の目をキョロキョロさせた。
「聞いておきたいことがある」
「はい…」
私は首を傾げた。
彼は逸らした目を私に向ける。
「お前は…料理を含む家事が苦手だから、実家に住んでいるのか」
──ん?どういう質問なのか。
その質問の意図がわからなかった私は、少しの間、鬼課長を見る。
まあ、素直に答えておけば、いいか。
「料理は本当に苦手です。でも、こう見えて掃除と洗濯は好きなんです。好きというか、気分転換に掃除と洗濯をすることが多いです。あ、妹は逆で、料理は得意ですが掃除と洗濯は苦手なんです」