お前は、俺のもの。
「……ぎ。…凪!」
自分が揺すられていることに気づく。
ぼんやりしている目で見ると、すぐ横で鬼が怒った顔で私を呼ぶ。
「あ。おにか…」
「なにが「あ」だっ。一時間も風呂から出てこないから心配しただろうがっ」
と、焦りながら早口で私を怒る。
「すみま、せん。気持ちよくて、つい…」
「まったく。頭と体は洗ったんだろ?ほら、あがれ」
いつもどおりの私の反応に安心したのか、鬼課長は呆れ顔で私に手を差し出した。
「ありがとうございます」
と、腕を伸ばしてその手を取ろうとした私。
そこで、改めてここが浴室だと気づく。
「!こ、ここっ、浴室!」
と、声を上げて慌てて手を引っ込めた。
鬼がうっすらと角を出す。
「ここで俺が戻ったら、寝ぼけたお前は今度こそ溺れるぞ」
「大丈夫です!もう目は覚めました」
私は当然裸なわけで、ここで立ち上がるわけにはいかない。
「…仕方ないな」
そう言って、鬼課長が浴室を出た次の瞬間。
「?!?!」
洗面所と浴室の電気が消え、真っ暗で何も見えなくなった。
「いっ…一ノ瀬課長、何をしてるんですか」
何処にいるのかわからない彼を呼んだ。
「これだけ暗ければ、見えないな」
と、意外と近くで聞こえた、彼の声。
「凪、手を出せ」
「お風呂くらい、自分で出ます。電気をつけてください」
鬼がここから立ち去ってくれないと、出られない。
「いやだ」
「なっ」
──角の生えたワガママな小学生かっ。
私が唖然としていると、再び、
「手を出せ」
と言う。