お前は、俺のもの。
多分、見えないが、鬼は私に手を差し出しているのだろう。もし、ここで私も手を伸ばしたら。鬼が私の手を掴んだら。
私はどうなってしまうのだろう。
もし、私が処女だとバレたら…。
心臓がドクドクと脈打ち、もう湯船の気持ちよさが全くわからない。
「凪。俺と一緒は、嫌か」
静かな低い、鬼の声。
『本音と素直』
──鬼に、触れたい。一緒に、いたい。
「…嫌じゃ、ないです」
私は、手を伸ばした。
闇の中に微かに見える、鬼のシルエットへ手を伸ばす。
「もう後戻りはできない」と思うと同時に、その手はすぐに握られた。
「凪」
優しく呼ぶ声に、私は湯船の中で立ち上がった。