お前は、俺のもの。
マンションのエントランスから外に出た私たち。繋がれた手が恥ずかしくて、少しだけ寄り添うように歩く。
鬼課長が立ち止まった。俯き加減に歩いていた私は、気づいて立ち止まり彼を見上げた。
彼の視線を追う。
そこには綺麗な顔が酷く歪んだ、小堺るみが立っていた。
鬼課長はそっと手を離すと、私の前へ一歩踏み出した。
「……」
彼は黙って小堺るみの様子を窺っているようだ。
彼女の声が聞こえた。
「一ノ瀬課長がお休みなのは知っていました。でも会えるような気がして、朝からここで待っていました。一ノ瀬課長に謝りたいと思っていました」
朝から待っていた──。
既に夕方なのに、その執念に背中がゾクッと冷たくなる。
小堺るみの声はいつもとは違い、縋るような弱々しい声だ。
「謝りたい」と言っていたが、さすが若気の至りなのか胸元の大きく開いたノースリーブの真っ白なワンピース。裾は膝丈二十センチほど上の、太腿が見えるミニ丈だ。
──「謝りに」というより「誘惑に」の方がピッタリくるような格好かも。
鬼の後ろからチラリと覗いた私は、バッチリと彼女と目が合ってしまった。一瞬睨んだ彼女は、すぐに慈悲を請う顔に変わる。