お前は、俺のもの。
小さな水槽がズラリと並ぶ。水槽の中には小さな生き物たちが元気いっぱいに泳いでいた。
私がカクレクマノミに気を取られていると、
「凪、兄貴から電話だ」
と、鬼課長がスマホを軽く上げて、着信があることを告げた。私は頷いて、彼はエリアの出口へ向かっていった。
スマホの時計を見る。イルカのショーまで三十分程の時間がある。
水槽の中の可愛らしい生き物をゆっくり見て、次のエリアへ歩いた。
薄暗い空間の中で、アクアリウムのクラゲが泳いでいる。青いライトに照らされた小さなクラゲたちが幻想的で美しい。
傘が大きいクラゲは「私を見て」と主張しているように見え、赤く染まるクラゲがとても情熱的に見えたり。そんな多彩な姿のクラゲたちに、私も楽しくなってしまう。
ついつい見とれているうちに、時間のことを忘れてしまいそうになる。
クラゲエリアを抜けると、広いロビーに出た。
この時には腰の状態も元に戻って普通に動くことも平気なくらいだ。
鬼課長の姿を探そうと、辺りを見渡す。
「ん?」
私は大きな柱の前で、女性たちに囲まれた突き出た頭を見つけた。少し動いて見える角度を変えてみると、スマホを片手に若い女の子たちと話をする鬼課長が見えた。
──どこにいても目立つ、イケメンな一ノ瀬 梛。
一番に愛されていると頭でわかっていても、人間の感情は誤魔化せないものだと、内心複雑な気持ちになる。
『彼女たちとの会話が終わったら、追いついてくださいね。イルカショーの会場へ行ってきます』
私は彼へメールをして歩き出した。