お前は、俺のもの。
ひやり。
久々に感じる冷たい空気に、体がビクリと震える。そぉっと視線を鬼の顔へ向ける。
彼の逆三角形の目はギロリと私を睨んで、頭の上に見えるツノが先を尖らせて、立派に生えていた。
ビクビクする私に、彼の低い声が飛んできた。
「俺が、不要だと言いたいのか」
私は首が捻れるくらい、ブンブンと横に何度も振る。
「な、梛は必要ですっ。絶対に、必要っ」
相手を威圧しようとするのは如何なものかと思っていても、私を心配して幾分過保護になっていることがわかっているだけに、はっきりと強く言えない。
惚れた弱みである。
おかげで、せっかく食べやすい柔らかさになったアイスクリームも、彼から放つ冷気で再び凍りそうだ。
余程、私は怯えているように見えたのだろう。
鬼課長は右手で自分の顔を覆い、「はあぁ」と大きなため息を吐いた。
「怖がらせて、悪かった。別に怒っているわけじゃない」
と弱々しい声に、自分の中の構えていた部分が緩む。
「凪のためにここに泊まれとか一緒にいればいいとか、お前が危ない目に遭わないようにと言っているが…結局は」
珍しく目をキョロキョロさせて動揺したような彼に、なんだか胸がキュンとしてしまう。
鬼課長はチラリと私の視線に合わせた。
「結局は、俺がお前と離れたくないんだ…」
目尻の下がった瞳が可愛すぎて、完全にノックアウトされた。
──私の方が、離れたくないっ。
甘い空気にドキドキさせられ、頭から足の爪先までボゥッと熱くなる。
そして今度は私の熱で、アイスクリームがトロトロに溶けそうだ。
鬼課長は気持ちを切り替えるかのように軽く咳払いをして、「とにかく」と真面目な顔をする。
「お前の両親には今日のことを話して、通勤の安全面も考えてここの滞在期間を延ばしてもらうことを承諾してもらおう。ここなら会社も近いし俺も一緒だし目も届くから安心出来る。それでいいか?」
私は鬼課長の優しさに甘えて、ただ頷くしかなかった。